洗濯機の風呂水用給水ホースの修理

先日,我が家の洗濯機が壊れました.壊れたと言っても洗濯自体はできるのですが,風呂水の給水ホースが水を吸い上げなくなってしまいました.

洗濯機の型式は東芝製AW-7G3で約4年使用しています.

 

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故障原因の特定は難しいのですが,とりあえず以下の4つを考えました.

①パッキンの劣化

②ホースの破損(亀裂等)

③ホースのフィルタが汚れている

④給水ポンプ(モータ)の故障

ただし,③についてはフィルタは定期的に掃除しているので今回は除外,④についても給水の際にモータ音は聞こえていて,特に弱っている感じもしなかったので除外しました.ちなみにモータが故障した場合,ネット上では自分で代品を購入して交換している猛者もいるようですが,何かあったときに間違いなく補償の対象外になるのでお勧めしません.

 

ということで①②を念頭に調べていきますが,調べるといっても①パッキンの劣化は見た目では判断ができませんし,②ホースの破損も小さな穴が空いているぐらいだと見つけるのは困難です.どちらも新品と交換して効果があるか調べます.

 

今回はまずは1番安く済みそうなパッキンから潰しに行きました.元々ホースに付いていたパッキンのサイズを定規で大まかに測ってみると

線径:2.5

内径:15

といったところでした.ホームセンターに現物を持って行って下記を購入しました.

 

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正しくは線径2.4,内径14.8でした. 

ここで注意したいのが,パッキンのサイズはとても豊富にあることです.ホームセンターの売り場にも内径1mm違いで様々なサイズが置いてありました.パッキンを購入する際は現物を持参して,商品と合わせてサイズを確認することをお勧めします.

パッキンを新しい物に交換したところ,ホースの取付の際に以前より強い抵抗力があり,パッキンがしっかり効いている感じがしました.(逆に言えば今まではユルユルだったということか…)

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これでちゃんと水を吸うか??と期待したのですが,残念ながら結果はダメでした.

 

 

仕方がないので,次はホースの交換です.東芝製の場合は純正品(単価:1760円)をネットで購入することができます.

 

www.toshiba-lifestyle.co.jp

www.amazon.co.jp

 

ただし,ほとんどの機種は上記のホースが対応しているようですが,一部対象外もあるようなのでよく確認してから購入して下さい.

届いた純正品ですが,見た目は一緒なんですがなんだかすごく軽い!購入時の従来品とは材質が変わって軽量化されたようです.(見た目同じなので写真は割愛)

ホースを交換して再チャレンジすると,しっかり給水してくれました!古いホースはどこかに小さい穴でも開いていたのでしょうか.4年も使うと劣化してしまうものなんでしょうね.

 

以上,洗濯機の給水機能の修理でした.

購入したパッキンも無駄にはしたくないので,前述のとおり同じパッキンを4年も使っているとユルユルになっていることが分かったので,新ホースの方は良いタイミングでパッキンを交換してあげようと思います.

 

 

電気系雑誌の比較

電気系の雑誌と言えば電気書院から出版されている電気計算オーム社から出版されている新電気やOHMが有名です.電気主任技術者技術士を目指す方にとってはこうした雑誌から最新の業界トレンドや技術情報を得られるのは良いことですよね.時期によっては各種資格試験の解答・解説も掲載されるので,資格の勉強にも役立ちます.

ただ,上に挙げた3つの雑誌全てに目を通すのは時間もお金もかかってしまうので大変です.本記事ではそれぞれの雑誌を個人的に比較してみたので,どの雑誌を購読するか迷っている方の一助になれば幸いです.

 

早速ですが,各雑誌の比較表を下記のようにまとめました.黒字は公式情報,緑字は個人的見解です.

  電気計算 新電気 OHM
出版社 電気書院 オーム オーム
発売日 毎月12日 毎月1日 毎月5日
価格 ¥1,760 ¥1,450 ¥1,650
電子書籍
対象

電験1種,2種,3種

エネ管

技術士

電験3種

エネ管

電験1種,2種

技術士

ページ数 普通
見やすさ ×

 

発売日

電気計算は毎月中旬,新電気とOHMは毎月頭に発売されます.雑誌あるあるですが月号の付き方に注意が必要で,電気計算の場合は発売日の翌月の月号,新電気とOHMの場合は発売日と同じ月の月号が付きます.例えば10/12に発売される電気計算は11月号,10/1に発売される新電気と10/5に発売されるOHMは10月号という具合です.

 

価格と定期購入先

価格は3誌とも税抜きで¥1,500前後です.大きめの書店で購入可能である他,公式サイトや楽天Amazonからの購入も可能です.ただ,公式サイトの場合は送料がかかるので,楽天Amazonの方が結果的に安いです.また,楽天は一度売り切れると再入荷することはほぼないようで,Amazonの方が比較的在庫が多いイメージです.資格試験の解答が掲載される月号については発売日前から売り切れていることがあるので特に注意が必要です.

単発で購入する場合は表の価格になりますが,定期購入することで若干の割引が適用されるようです.定期購入についても,公式サイトの他,楽天ではFujisanというオンライン書店と提携しているようで,3誌ともにこちらを通して定期購入が可能です.

www.fujisan.co.jp

 

電子書籍の取り扱い有無

近年,利用する方も多い電子書籍ですが,電気計算は残念ながら電子書籍版は発行していません.一方で,新電気とOHMは電子書籍版も紙版と同価格で発行されています.

電子書籍のメリットとしては,雑誌の保管スペースが不要なこと,スマホタブレットを使ってどこでも閲覧可能なことが挙げられます.特に月刊誌を購読すると毎月雑誌が手元に1冊増えるわけですから,それなりに保管スペースが必要です.外出先や通勤・通学時の電車内でスマホを使って雑誌を閲覧できるのも余計な荷物が必要なくて便利ですね.

デメリットとしては,雑誌の付録は電子書籍版では付属しないことがあるそうなので注意が必要です.付録が目当ての場合は紙版を購入しましょう.

 

対象と難易度

電気計算は読者のターゲットを明記していませんが,解答掲載する資格試験から判断すると電験1~3種,エネ管,技術士を対象にしていると考えられます.新電気,OHMは公式HPに記載の通りです.

 

ここからは個人的見解です.

内容の難易度としては読者ターゲットに対応して新電気,電気計算,OHMの順に難しくなっていく印象を受けました.ただ,内容の充実度としては,OHMはページ数自体が少ないことに加えてオーム社の書籍の宣伝ページが多く,値段の割に得られる情報は少ないのかな?と感じました.電気計算,新電気については業界のトレンドや現場の声など,興味をひく記事が多数掲載されていて充実した内容でした.

続いて中身の見やすさについて,最初の表では電気計算を×,新電気とOHMを◯としました.電気計算が特別読みづらいと言うわけではないのですが,他の2つに比べると少し見劣りします.というのも電気計算は表紙こそカラー印刷ですが,中身は全てモノクロです.簡単な図表ならモノクロで構いませんが,複数プロットのグラフや写真なんかはカラーで鮮明に掲載する方が圧倒的に読みやすく理解しやすくなります.新電気とOHMは記事によってはカラーページになっていて読みやすいです.OHMについては紙質もツルツルしたいい紙になっています.

 

まとめ

電気系雑誌の定番である電気計算,新電気,OHMについて個人的見解を含めて比較してみました.どれを購読するか迷っている方の参考になれば幸いです.上述のFujisanでは一部ですが試し読みもできるので,一度覗いてみるともっとイメージが掴めるかもしれません.

個人的には電気計算の内容が自分に合っていたので定期購読予定なのですが,電子書籍化への対応ともう少し読みやすい(現代っぽい?)デザインに変わっていくことを期待します.

 

 

パプリカの水耕栽培

パプリカの種を購入

 

バジルの水耕栽培が軌道に乗り始めたので,他の植物にも手を出してみようということでパプリカを育ててみることにしました.

バジルの水耕栽培についても,LED制御とかポンプ制御とか色々やっているのでそのうちまとめて記事にしたいと思います.

 

パプリカの種は楽天市場の藤田種子というところから購入しました.こちらの品種は背丈が50cm程度の小さいものらしく,私の場合は室内で育てるので好都合でした.

 

発芽まで

 

バジルと同様にスポンジに切れ目を入れて,パプリカの種をセットしました.パプリカの種は嫌光性種子のため光を遮る必要があるとのことでしたので,アルミホイルを被せておきました.これで2週間待てば発芽する…かと思いきや2週間後にも種には全然変化がありませんでした.「これは遮光が甘かったか??」と思い,下のような黒い箱の中に入れると1週間してようやく発芽しました.遮光は大事ですね.

 

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遮光に使用した100均の黒い箱

 

ちなみにこの黒箱は水耕栽培容器として使う予定のものでした.もう少し大きくなったらこれに溶液を入れて栽培します.

 

発芽した…けど種被ったまま!

 

ようやく発芽したパプリカの写真がこちらです.

 

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発芽したパプリカ.種の殻を被っている.


 

写真だと分かりにくいですが,本来出るはずの双葉が種の殻を被ったまま立ち上がってしまっているのです.このまま双葉が隠れたままだと枯れてしまうので,種の殻を取ってあげることにしました.

ただ指で引っ張っても取れそうになかったので,まずは濡れたティッシュで種の殻を湿らせてある程度ふやかしました.ふやけた種の殻をピンセットで引っ張るとスルスル〜と綺麗に殻が取れました.殻が取れたあとの写真がこちらです.

 

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殻が取れた後のパプリカ

 

おそらくですが,土で栽培する場合は発芽の際に土の摩擦でちゃんと殻を脱いで芽を出すのでしょうが,今回は培地がスポンジのため摩擦が小さかったのが原因かと思われます.ただ,種は2つ蒔いていたのですが,2つ目の方はきちんと殻を脱いで発芽してくれたので運が悪かっただけかもしれません.いずれにしても殻を被ったままだと成長できずにそのまま枯れてしまうそうなので,他の植物でも双葉に殻が付いている時は今回のようにピンセットで上手に殻を取ってあげるのが良いと思います.

 

現在は

 

本葉も生えてきた現在の様子がこちら.

 

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現在のパプリカの様子(発芽から約2週間)

順調に育ってくれています.ただ,葉物のバジルと比べると成長速度は断然遅いですね.これから寒くなるので室温に注意しながら,気長に成長を見守ろうと思います.

 

 

分かりにくいイオンのポイント制度を大解説

今回は少し毛色の違う記事を書いてみます.

私は普段の買い物ではイオンのクレジットカードを使うことが多いのですが,貯まったイオンのポイントを使おうと思ったらポイント制度が複雑怪奇すぎて戸惑いました.具体的に言うと,WAONポイントとWAON POINTの2種類があって,両者の違いがとても分かりにくいのです.ネットで調べたりもするのですが,何せ同じ名前(声に出したらどちらもワオンポイント笑)なので情報を探すのも一苦労です.

どうすれば上手にポイントを使えるのか,どうにかこうにか調べた結果をまとめたいと思います.(書き残しておかないとまたワケがわからなくなりそうなので…)

 

電子マネーとポイントの違いは?

まずは電子マネーとポイントについて整理します.

イオンの電子マネーWAONです.電子マネーで有名なのは電車に乗る時に使うSuicaがありますが,WAONの使い方もSuicaと同様にあらかじめお金をチャージしておくことで各店舗の支払時に電子マネーとして使用することができます.

ここで,注意したいのがWAONは後述する「ポイント」ではなく,「電子マネー」であるということです.「ポイント」と「電子マネー」の違いはずばり貯め方にあります.

「ポイント」の場合は,お店で買い物したりとか,キャンペーンに応募した際に決められた分のポイントを獲得することができます.逆に言うと,自分で好きなだけポイントを獲得するということはできず,何かのオマケとして貰えるようなイメージです.

これに対して,「電子マネー」は自分で好きな分だけチャージすることができます.ただ,お店で買い物したり,キャンペーンに応募したとしても「電子マネー」が貯まることはありません.あくまで自分でチャージしない限り「電子マネー」は増えないのです.(電子マネーで支払→ポイント獲得→獲得したポイントを電子マネーに交換,とすることはできますが,この場合もまずはポイント獲得が介在することになります.)

 

イオンのポイントは3種類ある

電子マネーとポイントの違いがわかったところで,次はイオンのポイントについて整理します.イオンのポイントは,ときめきポイントWAONポイントWAON POINTの3種類があります.この記事では少しでも混乱を避けるために,それぞれの文字色をときめきポイントWAONポイントWAON POINTで記載しようと思います.ここで,冒頭に記した通りWAONポイントWAON POINTは別物なのでご注意下さい.またWAONポイントWAON POINTはどちらも「ポイント」であって,「電子マネー」のWAONとも別物なので合わせてご注意下さい.

3種類のポイントについて,その使い方と貯め方をまとめました.

ときめきポイント

使い方:

 1000ポイント単位で下記と交換できる.(WAONに直接交換することはできないので,WAONポイントまたはWAON POINTを経由する必要がある.)

  • WAONポイント(1ときめきポイント=1WAONポイント)
  • WAON POINT(1ときめきポイント=1WAON POINT)
  • カタログギフト,商品券等 

貯め方:

 クレジット支払い時に200円で1ポイント貯まる

 

WAONポイント

使い方:

 ポイントだけでは使えない
 1WAONポイント=1WAONで電子マネーに交換して使える

貯め方:

 WAONで支払い時に200円で1ポイント貯まる

 

WAON POINT

使い方:

 1WAON POINT=1円で使える
 1WAON POINT=1WAONで電子マネーに交換して使える 

貯め方:

 現金支払い時に200円で1ポイント貯まる
 オートチャージ200円で1ポイント貯まる
 給与受取で10ポイント貯まる(イオン銀行利用の場合)
 公共料金支払いで1件あたり5ポイント貯まる(イオン銀行利用の場合)

 

基本的には買い物をした際にポイントが貯まるのですが,買い物の際にクレジット・現金・電子マネー(WAON)のどれで支払をしたかによって貯まるポイントの種類が異なります.私の場合はクレジットで支払う機会が多いので,ときめきポイントがよく貯まっています.いつもWAONで支払いをする人の場合はWAONポイントが,現金で支払いする人の場合はWAON POINTが貯まることになります.

 

貯まったポイントはどう使うのが一番良いのか

ずばり結論から書くと,ポイントはWAONに交換して電子マネーとして使うのが一番良いです.WAON POINTに交換してポイント支払いすることも可能ですが,WAON電子マネーとして使う方がWAONポイントが貯められる分少しお得です.

ときめきポイントWAONに交換する場合,WAONポイントWAON POINTどちらを経由する方が良いでしょうか?ポイントの交換利率はどちらも同じなので違いはありませんが,もしイオン銀行を利用している方ならWAON POINTへの交換をお勧めします.理由はWAON POINTの貯め方で説明した通り,イオン銀行利用者の場合は給与受取や公共料金支払いによって知らないうちにWAON POINTが貯まっている可能性があるからです.このイオン銀行の利用によって貯まるWAON POINTは「センター預かり」なる扱いになっており,イオンのATMで確認しない限りはポイントの存在が全く把握できない上に有効期限があるために知らないうちにポイント失効していることがあります.(私の場合はまさにこの通りでした…)このセンター預かりWAON POINTを定期的に確認・獲得するためにもWAON POINTへの交換をお勧めします.

 

以上,複雑怪奇なイオンのポイントについてまとめました.3種類も分ける必要はないんじゃないかとか,ネーミングが悪すぎるから過度に混乱するんじゃないかとか,思うところは多く,ぜひポイント制度の見直しを期待したいですが,現状は我慢するしかないですね.

 

表皮効果について〜③パイプ導体の電流密度分布〜

前回の記事では,円柱導体の電流密度分布についてアニメーションを用いて詳しく掘り下げて考えました.この場合,導体の中心部の振幅は小さい(電流は小さい)のに対して,導体の外側付近の振幅は大きく(電流は大きく)なっており表皮効果を目で見て理解することができました.表皮効果は高周波になるほどより顕著になり,無線通信なんかの領域になると円柱導体では中心部にはほとんど電流は流れないので,中心部をくり抜いたパイプ導体がよく使われています.本記事ではパイプ導体の電流密度分布について記載します.

 

パイプ導体の電流密度分布の時間変化

前回同様,下記の(☆)式に各種変数を代入してアニメーションをプロットします.円柱導体の時はb=0としましたが,今回はパイプなのでb=10 [mm]とします.( k=\sqrt{j \omega \mu \sigma})

  \begin{align} i(r) =\frac{k}{2\pi a}\frac{K_1(kb)I_0(kr)+I_1(kb)K_0(kr)}{I_1(ka)K_1(kb)-I_1(kb)K_1(ka)}I \tag{☆} \end{align}

 a=30 [mm]

 b=10 [mm]

 ω=2 \pi x 60 [rad/s]

 μ=1.257e-6 [H/m]

 σ=3.546e-7 [S/m]

 I=1 [A]

これを実行すると下記のアニメーションが得られます.

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パイプ導体の電流密度分布

これを見ると,ちょうど前回の円柱導体の電流密度分布の中心部をくり抜いたような分布になっているのがわかります.中心部を削っても同じような分布が得られるなら導体の軽量化・低コスト化ができて良いですね.

 

パイプの肉厚を変えると分布はどうなるか

と,ここで一つ疑問が.

上のアニメーションはとりあえずb=10 [mm]としましたが,bをもっと大きくしたら,すなわちパイプの肉厚をもっと減らしていったら分布はどうなるのでしょう.というのもどうせ中心部をくり抜くなら,中途半端にくり抜くのではなくギリギリまで削りたいですよね.そこでb=0, 10, 20, 25 [mm]と変化させた場合の電流密度分布(振幅)を計算して下記に並べてみました.

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上からb=0(穴無), 10, 20, 25 [mm]の時の電流密度分布

b=10 [mm]のときは先ほどアニメーションでみたのと同じなのでちょうどb=0 [mm]の中心部をくり抜いたような結果になっています.

b=20 [mm]のときはというと少し分布が変わってきます.外表面部分(r=±30 [mm]付近)はb=0 [mm]のときと同等で700 [A/mm ^2]程度ですが,少し内側のr=±20 [mm]でも600 [A/mm ^2]程度あり,これはb=0 [mm]では400 [A/mm ^2]程度なのに比べると高くなっています.振幅の変動が600-700の範囲なのでだいぶフラットになり,表皮効果をかなり抑えられています.言い換えると,直流の分布に近づいているとも言えますね.

続いてさらに肉厚を薄くしたb=25 [mm]の場合ですが,電流の流れる全範囲(r=±25~30 [mm])で1200 [A/mm ^2]程度と値が跳ね上がりました.変動範囲は狭いので直流に近い分布と言えますが,電流密度が高いということはそれだけ熱も発生することを意味するので実用可能かどうかは判断が難しいところです.

 

以上まとめると,パイプ形状にする場合ある一定の肉厚までなら円柱形状(b=0 [mm])のときと同等(b=10 [mm])あるいは電流密度の向上を図ること(b=20 [mm])ができます.ただ,一定の肉厚を超えて,あまりにくり抜きを大きくしすぎると(例えばb=25 [mm]),電流が流れる部分が少なくなりすぎて熱を持ってしまうことになります.一番効率の良くなるちょうど良いパイプ形状があるということですね.なお,今回は商用周波数の60 [Hz]で計算しているのでこのような結果ですが,周波数が変われば結果も大きく変化するので注意が必要になります.

 

全3回にわたって表皮効果について記事を書きました.アニメーションで時間変化を掴むとともに,少し発展してパイプ形状の電流密度分布についてもグラフを用いて結果を解説しました.どなたかの理解の助けになれば幸いです.

 

表皮効果について〜②電流密度分布の時間変化を可視化〜

前回の記事で電流密度分布が下記の(☆)式になることを導出しました.( k=\sqrt{j \omega \mu \sigma})

  \begin{align} i(r) =\frac{k}{2\pi a}\frac{K_1(kb)I_0(kr)+I_1(kb)K_0(kr)}{I_1(ka)K_1(kb)-I_1(kb)K_1(ka)}I \tag{☆} \end{align}

 この記事では(☆)式を元にグラフおよびアニメーションを描画し,電流密度分布の時間変化を理解しやすいように可視化します.

 

ちなみに以前の記事で「技術計算にはpythonではなくOctaveを使います!」と高らかに宣言していたのですが,MacOctaveではグラフの保存がうまくできなかった(会社のWindowsOctaveではちゃんと保存できるのですが...)ので今回のグラフは全てpythonで頑張って作りました.

 

電流密度分布の振幅のグラフを描画 

グラフを描画するにあたって今回は周波数60Hzで直径60mmのアルミ導体に1Aの電流を流した場合を考えます.したがって,各変数は下記の値となります.

 a=30 [mm]

 b=0 [mm]

 ω=2 \pi x 60 [rad/s]

 μ=1.257e-6 [H/m]

 σ=3.546e-7 [S/m]

 I=1 [A]

 これらを(☆)式に代入するとi(r)は複素数となりますが,このi(r)の絶対値(ベクトルの大きさ)をとると電流密度の振幅は下記のようなグラフになります.

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電流密度の振幅の径方向分布をプロット

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電流密度の振幅のコンター図

これは表皮効果の説明でよく出てくる図です.電流密度の振幅は円の外側では800A/mm ^2ですが,内側に向かうに従って指数関数的に減少し,中心では160A/mm ^2程度しかありません.

 

...と,ここまでは色々なサイトでも説明されているのですが,本記事ではもう少し掘り下げて考えてみます.というのもここまで電流密度の「振幅」という言葉をあえて使ってきましたが,交流の場合は周波数60Hzで電流が周期的に時間変化しており,「振幅」というのはあくまでこの時間変化の最大値を取っているにすぎません.そこで上記のグラフのように最大値だけを見るのではなく,電流密度の時間変化を可視化したいと思います.ただ,時間変化は静止画では表わせないので,アニメーションを使って可視化します.

 

時間変化がどうなるかの予想 

私がはじめになんとなく考えていたことは,振幅(最大値)のグラフが上記の分布であれば,時間変化の様子は単純にこれをsin波にあてはめて変化させた下記のようなグラフになるのでは?ということでした.しかし,これは間違いですので,同じことを考えていた方はぜひ最後まで読んでくださいね.

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はじめに予想していた時間変化の様子.でもこれは間違いです.

 

電流密度の時間変化

もう一度(☆)式に戻ります.先ほどはi(r)の絶対値をとりましたが,今度はi(r)の虚数部をとります.位相を0~360°まで変化させた結果のアニメーションを下記に示します. 

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電流密度の時間変化のアニメーション

これを見るとわかるように,半径rのどの位置でもきちんと点線で示した振幅を守って60Hzで振動しているのがわかります.しかしながら,位相に注目すると中心に向かうほど遅れが生じています.私がはじめに予想したアニメーションはこの位相遅れを考慮していない点が間違っていたわけですね.ただ,このような時間変化をきちんと理解するには実際に自分で計算してアニメーションまで作らないとなかなかわからないと思うので,本記事がその助けになれれば幸いです.

 

ここからは少し余談です.上記の通り電流分布を見ると中心に向かうほど位相遅れが生じていることがわかりましたが,位相遅れがあるということは見方を変えると位置によって電流の向きが反転する可能性があることを示します.例えば位相が170°のときの電流分布は下記の通りですが,半径-10~+10mmの範囲では電流密度は約+200A/mm ^2でプラスの値,半径±30mm付近では約-400A/mm ^2でマイナスの値をとっています.電流密度の正負の値は電流の流れる方向を表すので,中心付近(-10~+10mm)と外側(±30mm)では電流の向きが逆転していることがわかります.

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位相が170°の時の電流分布.中心は正向きだが,外側は逆向きに電流が流れている.

これを図解するとこんな感じです.↓

 

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位相が170°のときの導体断面.領域Aと領域Bでは電流の方向が逆転する.

電流をミクロに見るとこのような分布になっているわけですが,実際に電流を測定する際はマクロにしか見ることができません.というのも電流計で測る電流はこれらの電流密度を積分した値を測定値としているわけですね.よく直流と交流の違いで交流は電流0点があるから遮断がしやすい(逆に直流は0点がないため遮断しにくい)ということが言われていますが,電流分布を見ると交流でも導体の断面の電流が完全に0になる瞬間というのは結局存在せず,あくまで電流密度の積分値が0になるときを電流0点と呼んでいることが伺えます.

 

次回は導体がパイプの場合の電流密度分布について投稿予定です.

表皮効果について〜①電流密度分布の導出〜

表皮効果について深く掘り下げて考える機会があったので,やったことを備忘録にまとめておきたいと思います.全3回の記事になる予定.

まず今回は表皮効果による導体断面の電流密度分布について導出方法をまとめたいと思います.

 

 

表皮効果の概要

電気には直流と交流があります.単三電池とかから得られるのが直流,家庭のコンセントから出てくるのは周波数が50Hzまたは60Hzの交流ですね.

直流と交流の違いの一つに電流分布の違いがあります.電流の流れる導体の断面を切って電流分布を考えると,直流の場合はどの位置でも均一に電流が流れるのですが,交流の場合は中心にはあまり電流が流れず,外側に行くほど電流が多く流れるといった分布になります.

 

この辺の話は色々なサイトや本で解説がされているのですが,実際に計算をして時間変化を理解できるグラフを描いたり,パイプ導体の場合の分布がどうなるかといったところを詳細に説明したものは見当たらなかったので,この記事ではそれらをまとめることを目指したいと思います.

参考にしたサイトをいくつか記載しておきます.

http://www.intex.tokyo/text/skin-effect/skin-effect-01.html

http://www.osssme.com/doc/funto105-no410.html

 

導体断面の電流分布の計算 

モデルとして下記のようなパイプ導体断面(外半径a,内半径b)を考えます.一般化のためにパイプとしていますが,円柱導体の場合はb=0として計算すれば良いです.

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導体断面モデル

このモデルにおいて半径rの位置の電流密度i(r)は下記の微分方程式で記述できます.

 \begin{align} \frac{d^2i(r)}{dr^2}+\frac{1}{r} \frac{di(r)}{dr} = j \omega \mu \sigma i(r) \tag{1} \end{align}

ここで

 ω:角周波数[rad/s]

 μ:透磁率[H/m]

 σ:導電率[S/m]

上記の微分方程式はベッセルの微分方程式としてよく知られており,一般解は下記になります.

 \begin{align} i(r) = CI_0(kr)+DK_0(kr) \tag{2} \end{align}

ここで

  C, D = 定数

  k=\sqrt{j \omega \mu \sigma}

  I_0()= 0階の第1種変形ベッセル関数

  K_0()= 0階の第2種変形ベッセル関数

C, Dを求めるために境界条件が必要です.今回の導体断面モデルの場合,境界条件は以下の2式になります.

 \begin{align} \frac{di(b)}{dr} = 0 \tag{3} \\ i(a)=i_0 \tag{4} \end{align}

ここで,導体外表面の電流密度を i_0としました.

境界条件(3)(4)式を(2)式に適用すると下記の(2-1)(2-2)式が得られます.

※(2-1)式の導出には変形ベッセル関数の微分の知識が必要になるのですが,これについては記事の末尾に補足をつけますので参照ください.

 \begin{align} 0 = CI_1(kb)-DK_1(kb) \tag{2-1} \\ i_0=CI_0(ka)+DK_0(ka) \tag{2-2} \end{align}

ここで

  I_1()= 1階の第1種変形ベッセル関数

  K_1()= 1階の第2種変形ベッセル関数

(2-1)(2-2)式を連立して解くと,C, Dは下記のように求められます.

 \begin{align} C = \frac{K_1(kb)}{I_0(ka)K_1(kb)+I_1(kb)K_0(ka)}i_0 \tag{5} \end{align}

 \begin{align} D = \frac{I_1(kb)}{I_0(ka)K_1(kb)+I_1(kb)K_0(ka)}i_0 \tag{6} \end{align}

続いて,この(5)(6)式を(2)式に代入することでi(r)が求められます.

 \begin{align} i(r) = \frac{K_1(kb)I_0(kr)+I_1(kb)K_0(kr)}{I_0(ka)K_1(kb)+I_1(kb)K_0(ka)}i_0 \tag{7} \end{align}

ただ,この式(7)は i_0を使って書かれており,このままでは数値計算するのに使い勝手が悪いです.というのも i_0は外表面の電流密度ですが,これは通常未知の値です.我々がわかるのは導体に流れる全電流 I(=電流密度を断面で面積分した値)なので,これを使って式(7)を書き換えます.

まずは全電流 Iを求めます.ベッセル関数の積分が少しテクニカルですが,詳細は補足を参照ください.

\begin{align} I &= 2\pi \int_b^a i(r)rdr \\ &= \frac{2\pi a}{k}\frac{I_1(ka)K_1(kb)-I_1(kb)K_1(ka)}{I_0(ka)K_1(kb)+I_1(kb)K_0(ka)}i_0 \tag{8} \end{align}

これより, i_0 Iで表すと

\begin{align} i_0 =\frac{k}{2\pi a}\frac{I_0(ka)K_1(kb)+I_1(kb)K_0(ka)}{I_1(ka)K_1(kb)-I_1(kb)K_1(ka)}I \tag{8'}  \end{align}

(8')式を(7)式に代入するとi(r)は

  \begin{align} i(r) =\frac{k}{2\pi a}\frac{K_1(kb)I_0(kr)+I_1(kb)K_0(kr)}{I_1(ka)K_1(kb)-I_1(kb)K_1(ka)}I \tag{☆} \end{align}

と求められます.これより,導体材料と交流周波数から kの値,導体の寸法からa, bの値を決定し,流れる電流 Iを決めてそれぞれを(☆)式に代入すれば導体断面の電流密度を求めることができます.

次回の記事では,実際に値を代入して電流分布がどうなるかグラフを描画して確認していきます.

 

補足:変形ベッセル関数の各種計算について 

本記事のなかで変形ベッセル関数の計算がいくつか出てきましたので,計算方法を補足します.記事中の計算を行う上で必要になる部分のみを記載しますので,より詳細については別途調べてみてください.

 

(2-1)式の導出について

第1種変形ベッセル関数,第2種変形ベッセル関数の両方に共通して下記の性質があります.nを整数とすると

\begin{align} I_{-n}(x)=I_n(x) \tag{*1-1} \end{align}

\begin{align} K_{-n}(x)=K_n(x) \tag{*1-2} \end{align}

また,微分について以下の公式があります.

\begin{align} \frac{dI_n(x)}{dx}=\frac{1}{2}\Bigl\{ I_{n-1}(x)+I_{n+1}(x)\Bigl\}\tag{*2-1}\end{align}

\begin{align} \frac{dK_n(x)}{dx}=-\frac{1}{2}\Bigl\{ K_{n-1}(x)+K_{n+1}(x) \Bigl\} \tag{*2-2} \end{align}

n=0の場合には(*1-1)(*1-2)式と組み合わせると下記が成り立ちます.

\begin{align} \frac{dI_0(x)}{dx}=\frac{1}{2}\Bigl\{ I_{-1}(x)+I_{1}(x) \Bigl\}=I_{1}(x) \tag{*3-1}\end{align}

\begin{align} \frac{dK_0(x)}{dx}=-\frac{1}{2}\Bigl\{ K_{-1}(x)+K_{1}(x) \Bigl\}=-K_{1}(x) \tag{*3-2}  \end{align}

 

(8)式の導出について

微分について以下の公式があります.

 \begin{align} \frac{d}{dx}\Bigl[x^nI_n(x)\Bigl]=x^nI_{n-1}(x) \tag{*4-1}\end{align}

 \begin{align} \frac{d}{dx}\Bigl[x^nK_n(x)\Bigl]=-x^nK_{n-1}(x) \tag{*4-2}\end{align}

n=1かつx=krとすると

 \begin{align} \frac{d}{d(kr)}\Bigl[krI_1(kr)\Bigl]=krI_{0}(kr) \tag{*5-1}\end{align}

 \begin{align} \frac{d}{d(kr)}\Bigl[krK_1(kr)\Bigl]=-krK_{0}(kr) \tag{*5-2}\end{align} 

両辺に左から \frac{d(kr)}{dr}( =k)をかけると

第1種変形ベッセル関数の場合:

\begin{eqnarray} \frac{d(kr)}{dr}\frac{d}{d(kr)}[krI_1(kr)] &=&\frac{d(kr)}{dr}[krI_{0}(kr)]\\ \frac{d}{dr}[krI_1(kr)]&=&k^2rI_{0}(kr) \\ \frac{1}{k}\frac{d}{dr}[rI_1(kr)]&=&rI_{0}(kr) \tag{*6-1}\end{eqnarray}

第2種変形ベッセル関数の場合:

\begin{eqnarray} \frac{d(kr)}{dr}\frac{d}{d(kr)}[krK_1(kr)] &=&-\frac{d(kr)}{dr}[krK_{0}(kr)]\\ \frac{d}{dr}[krK_1(kr)]&=&-k^2rK_{0}(kr) \\ \frac{1}{k}\frac{d}{dr}[rK_1(kr)]&=&-rK_{0}(kr) \tag{*6-2}\end{eqnarray}

両辺をrで積分して辺を入れ替えると

\begin{align} \int I_0(kr)rdr = \frac{r}{k}I_1(kr) \tag{*7-1}\end{align}

\begin{align} \int K_0(kr)rdr = -\frac{r}{k}K_1(kr) \tag{*7-2}\end{align}